
路地裏に、刻を止めて。
地図に載らない、あなただけの隠れ家
喫茶まぼろしについて
はじめまして。喫茶まぼろしの新マスターです。
2026年、先代マスターよりこの店を引き継ぎました。
56年という長い時間を積み重ねてきたこの場所には、言葉にできないほどのぬくもりがあります。
その空気を壊さないように、けれど少しずつ、この店らしさを育んでいけたらと思っています。
その取り組みのひとつとして、先代の“遊び心”を受け継ぎました。
先代マスターは、お客様を退屈させないように——
そんな優しさから、自作のクロスワードを作ってお渡ししていたそうです。
その小さな楽しみを私も引き継ぎ、コースターの裏にクロスワードを仕込みました。
どうぞ気軽に手に取ってみてください。
この店で過ごす時間が、少しでも楽しくなるきっかけになれば嬉しいです。
どうぞ、いつも通りに。ゆっくりしていってください。
2026年1月1日
先代マスターのお話

私がこの店を開業したのは、今からちょうど56年前でした。
父が小さなバーを営んでおり、幼い頃からその背中を見て育ちました。
グラスを磨く手つき、常連さんの笑い声。
「いつか自分の店を持てたら」—その憧れを胸に二十歳の私は右も左もわからないまま、豆の匂いだけを頼りにこの喫茶店を始めました。
時代も、流行も、街の顔も変わっていく。
周りが変わるほど、自分の店だけが取り残されて、古くなっていく気がして焦ったこともあります。
それでも、結局戻ってくるのは同じ結論でした。
「今日も灯りをつける」
それを、淡々と積み重ねてまいりました。
中でも、私の胸にいちばん強く残っている思い出があります。
あの頃は、私もお客様もまだ若くて、仲良くなるのにそう時間はかかりませんでした。
ある日、常連様のひとりが一冊のノートを持ってきて、こう言ったんです。
「マスター、このノート置いていい? 常連ノートにしようと思って。」
最初は、他愛のないひと言からでした。
「今日のおすすめ、うまかった」
「失恋したから苦めで頼む」
そんな短い言葉が、ページをめくるたびに増えていって、いつしかそのノートは“交換日記”みたいになりました。


私にとっては、あれが何よりの励みでした。
忙しい日も、うまくいかない日も、夜にノートを開けば、そこに今日の店の続きが書いてある。
あのページの匂いと、文字の温度は、今でも鮮明に覚えています。
そして今、私はこの店を次の世代に託します。
メニューも、珈琲の淹れ方も、きっと少しずつ違っていくでしょう。
けれど、この店には、変わらなくていいものがあると思っています。
次の世代に渡っても、あの頃ここに流れていた、当時のぬくもりが、形を変えながらも残り続けてほしい。
私はそう願っています。
2025年11月22日
ここから先は「常連ノート」が
必要なようだ。
全て読み終えたら、店員を呼び
この画面を見せよう。
※周りへのネタバレは注意しよう。